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合わせることで新しい概念を表現する新しい記号を生成できる。ブリスシンボルは文字がいかなる音声言語の音声にもまったく対応しないと
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わたしの転転転転転(……)転生とその死後に提出された作品にはタイトルがなく、受取拒否を危ぶんだ担当天使によって添えられたモーヴ色のリボンのほかには一切の手が加えられていないことが証明されている。展示会はいつでもどこでも盛況で、見学にきた見習天使たちの通ったあとにはぽつぽつと未明の宇宙が産み落とされた。天使たちはまだなにものにも慣れておらず、互いの影と珠の闇を指差しては「ナニナニ、ワケガワカラナイ」とささやき表情を見合わせる。時を見た上級天使の手によってひとつひとつ四次元に収められるやいなや、こんどはいっさんに駆け寄ってきて、われさきに、ふかふかの頬を赤く、平たい胸を高鳴らせ、喜びのあまり夢をつぎつぎに醒めさせた。翼の先っぽを突っつき合わせながら、いつまでも恥ずかしがって、嬉しがって、くすくす歌って、新しい世界に名づけようとしない。見兼ねた老天使が点呼をとったところ、数えられないものがいくつも見つかった。それがおそらくはきっかけだったと孤独な天使が思い至る序章から、ゆっくりでいいから、あなたに読んでほしい。
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ってくれよ。困るんだよ。
声のする方に崩れる様子のものがおり、親切から不慣れにも手近な縄にてそれなりの形に留まり繋がり断た
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森羅万象、零と一なる無限との合間、夢幻に揺蕩う。感なる想いは、私なるわたしに消える。留められない写し身は、宇宙の定義を問う。靄と霧が、甘露の光を淡くし、遡及と敷衍の漂いに、凝縮と発散を繰り返す。外には外があり、内には自己相似のそれがある。
もとめてと
あなたのといき
やさしくて
わたしのゆめの
あなたこいして
遠く、近く、哀が愛に躊躇いし、なお時を失う。眩暈の原点は、私ではなく、愛であるだろうか。淡く轟く色に似た宇宙の舞が、形の朧な夢となり、祈りの結晶となった。掌に収まらない意味が、波紋を宇宙に燻らしながら、逆に只ならぬ緊張を齎らした。私はあなた、あなたは私。ひとつに消える。
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森羅万象、零と一なる無限との合間、夢幻に揺蕩う。感なる想いは、私なるわたしに消える。留められない写し身は、宇宙の定義を問う。靄と霧が、甘露の光を淡くし、遡及と敷衍の漂いに、凝縮と発散を繰り返す。外には外があり、内には自己相似のそれがある。
もとめてと
あなたのといき
やさしくて
わたしのゆめの
あなたこいして
遠く、近く、哀が愛に躊躇いし、なお時を失う。眩暈の原点は、私ではなく、愛であるだろうか。淡く轟く色に似た宇宙の舞が、形の朧な夢となり、祈りの結晶となった。掌に収まらない意味が、波紋を宇宙に燻らしな
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真っ白なキャンバスがありました。
傍には「自由をお描きください」と看板が立ててありました。
セーラー服の女の子がやってきて、カゴから飛び立つカナリヤを描きました。
自転車に乗った子どもがやってきて、大海原を泳ぐクジラを描きました。
坊主頭の男がやってきて、格子ごしに見える月を描きました。
いろいろな人がやってきて、上から上からどんどん絵を重ねていきました。
やがてキャンバスは真っ黒になりました。
通りすがりの人々は首をひねって絵の前を通り過ぎました。
夜になりました。
暗くて真っ黒なキャンバスは見えませんでした。
けれども見えないキャンバスの上を自在に駆け巡る何かがありました。
ヒョーザザッツィーツイィーザンックルクルクルツイィーツィークルクルザンッ
青い炎を閃かせ、光る花びらを散らし、あるがままに思うがままに飛翔するのでした。
次の朝、真っ白なキャンバスがありました。
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むかしむかし、空の向こうからタルタル人がやってきた。彼らは人間と同じような姿かたちをしていたが、人間にはない、やわらかなからだを持っていた。からだのどの部分もどこまでも伸び、どこまでも曲がった。
タルタル人たちは、友好の証として、自らのからだを切り裂いた。人間たちは驚いたが、タルタル人は痛がる様子もなく、流れ落ちてくるほんのり黄色みがかった白い液体を、見たことのない透明な器に入れた。タルタル人は言った。「わたしたちのからだはとてもおいしい。ぜひ食べてみてください」と。人間たちは気味悪がったが、ひとりのおなかをすかせた子どもがその液体を舐めた。子どもは叫んだ。「おいしい!」と。人間たちは顔を見合わせ、それからおそるおそるその液体を舐め始めた。液体は、今まで食べたどんなものとも似ても似つかない味わいで、彼らはあっという間にその液体を舐め尽くした。そして、その様子を黙って見ていたタルタル人たちに襲いかかった。
かくして、タルタル人たちは消えてしまった。タルタル人を食べた人間たちも消えてしまった。タルタル人の味を再現して作ったというソースだけが残されている。
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むかしむかし、空の向こうからタルタル人がやってきた。彼らは人間と同じような姿かたちをしていたが、人間にはない、やわらかなからだを持っていた。からだのどの部分もどこまでも伸び、どこまでも曲がった。
タルタル人たちは、友好の証として、自らのからだを切り裂いた。人間たちは驚いたが、タルタル人は痛がる様子もなく、流れ落ちてくるほんのり黄色みがかった白い液体を、見たことのない透明な器に入れた。タルタル人は言った。「わたしたちのからだはとてもおいしい。ぜひ食べてみてください」と。人間たちは気味悪がったが、ひとりのおなかをすかせた子どもがその液体を舐めた。子どもは叫んだ。「おいしい!」と。人間たちは顔を見合わせ、それからおそるおそるその液体を舐め始めた。液体は、今まで食べたどんなものとも似ても似つかない味わいで、彼らはあっという間にその液体を舐め尽くした。そして、その様子を黙って見ていたタルタル人たちに襲いかかった。
かくして、タルタル人たちは消えてしまった。タルタル人を食べた人間たちも消えてしまった。タルタル人の味を再現して作ったというソースだけが残されている。
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むかしむかし、空の向こうからタルタル人がやってきた。彼らは人間と同じような姿かたちをしていたが、人間にはない、やわらかなからだを持っていた。からだのどの部分もどこまでも伸び、どこまでも曲がった。
タルタル人たちは、友好の証として、自らのからだを切り裂いた。人間たちは驚いたが、タルタル人は痛がる様子もなく、流れ落ちてくるほんのり黄色みがかった白い液体を、見たことのない透明な器に入れた。タルタル人は言った。「わたしたちのからだはとてもおいしい。ぜひ食べてみてください」と。人間たちは気味悪がったが、ひとりのおなかをすかせた子どもがその液体を舐めた。子どもは叫んだ。「おいしい!」と。人間たちは顔を見合わせ、それからおそるおそるその液体を舐め始めた。液体は、今まで食べたどんなものとも似ても似つかない味わいで、彼らはあっという間にその液体を舐め尽くした。そして、その様子を黙って見ていたタルタル人たちに襲いかかった。
かくして、タルタル人たちは消えてしまった。タルタル人を食べた人間たちも消えてしまった。タルタル人の味を再現して作ったというソースだけが残されている
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むかしむかし、空の向こうからタルタル人がやってきた。彼らは人間と同じような姿かたちをしていたが、人間にはない、やわらかなからだを持っていた。からだのどの部分もどこまでも伸び、どこまでも曲がった。
タルタル人たちは、友好の証として、自らのからだを切り裂いた。人間たちは驚いたが、タルタル人は痛がる様子もなく、流れ落ちてくるほんのり黄色みがかった白い液体を、見たことのない透明な器に入れた。タルタル人は言った。「わたしたちのからだはとてもおいしい。ぜひ食べてみてください」と。人間たちは気味悪がったが、ひとりのおなかをすかせた子どもがその液体を舐めた。子どもは叫んだ。「おいしい!」と。人間たちは顔を見合わせ、それからおそるおそるその液体を舐め始めた。液体は、今まで食べたどんなものとも似ても似つかない味わいで、彼らはあっという間にその液体を舐め尽くした。そして、その様子を黙って見ていたタルタル人たちに襲いかかった。
かくして、タルタル人たちは消えてしまった。タルタル人を食べた人間たちも消えてしまった。タルタル人の味を再現して作ったというソースだけが残されている