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これが人生で四度目の恋だった。いや、恋はもっと密かにたくさん行われてきたのだけれど、正式にお付き合いした回数が四回目。
「飽きない?」
私はチキンを頬張る彼に、おそるおそる尋ねた。彼が美味しそうに何度も口にするチキンにも、私がナイフを入れている魚料理にも青々としたパセリが散りばめられたタルタルソースが、たっぷりとかかっていたのだ。
ツンとしたアクセントになるパセリや鮮やかな玉ねぎの味がふと以前の恋を思い出させる。相手から唐突に告白され、そして一方的に別れを告げられた苦い記憶。
「出会った時は何て魅力的な女の子なのだと思ったけれど」
続く言葉は皆、そこが辛くなってしまうのだと言う。
私はタルタルソース系女子なのかもしれない。
最初は独特なクセのある部分に魅かれるも結局くどくなっていく。
「飽きるどころか」
彼は口元にソースが付いていることにも気づかずに小さな笑窪を見せながら笑った。
「ますます好きになっていくよ」
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むかしむかし、空の向こうからタルタル人がやってきた。彼らは人間と同じような姿かたちをしていたが、人間にはない、やわらかなからだを持っていた。からだのどの部分もどこまでも伸び、どこまでも曲がった。
タルタル人たちは、友好の証として自らのからだを切り裂いた。人間たちは驚いたが、タルタル人は痛がる様子もなく、流れ落ちてくるほんのり黄色みがかった白い液体を、見たことのない透明な器に入れた。タルタル人は言った。「わたしたちのからだはとてもおいしい。ぜひ食べてみてください」と。人間たちは気味悪がったが、ひとりのおなかをすかせた子どもがその液体を舐めた。子どもは叫んだ。「おいしい!」と。人間たちは顔を見合わせ、それからおそるおそるその液体を舐め始めた。液体は、今まで食べたどんなものとも似ても似つかない味わいで、彼らはあっという間にその液体を舐め尽くした。そして、その様子を黙って見ていたタルタル人たちに襲いかかった。
かくして、タルタル人たちは消えてしまった。タルタル人を食べた人間たちも消えてしまった。タルタル人の味を再現して作ったというソースだけが残されている。
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むかしむかし、空の向こうからタルタル人がやってきた。彼らは人間と同じような姿かたちをしていたが、人間にはない、やわらかなからだを持っていた。からだのどの部分もどこまでも伸び、どこまでも曲がった。
タルタル人たちは、友好の証として、自らのからだを切り裂いた。人間たちは驚いたが、タルタル人は痛がる様子もなく、流れ落ちてくるほんのり黄色みがかった白い液体を、見たことのない透明な器に入れた。タルタル人は言った。「わたしたちのからだはとてもおいしい。ぜひ食べてみてください」と。人間たちは気味悪がったが、ひとりのおなかをすかせた子どもがその液体を舐めた。子どもは叫んだ。「おいしい!」と。人間たちは顔を見合わせ、それからおそるおそるその液体を舐め始めた。液体は、今まで食べたどんなものとも似ても似つかない味わいで、彼らはあっという間にその液体を舐め尽くした。そして、その様子を黙って見ていたタルタル人たちに襲いかかっ。
かくして、タルタル人たちは消えてしまった。タルタル人を食べた人間たちも消えてしまった。タルタル人の味を再現して作ったというソースだけが残されている。
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むかしむかし、空の向こうからタルタル人がやってきた。彼らは人間と同じような姿かたちをしていたが、人間にはない、やわらかなからだを持っていた。からだのどの部分もどこまでも伸び、どこまでも曲がった。
タルタル人たちは、友好の証として、自らのからだを切り裂いた。人間たちは驚いたが、タルタル人は痛がる様子もなく、流れ落ちてくるほんのり黄色みがかった白い液体を、見たことのない透明な器に入れた。タルタル人は言った。「わたしたちのからだはとてもおいしい。ぜひ食べてみてください」と。人間たちは気味悪がったが、ひとりのおなかをすかせた子どもがその液体を舐めた。子どもは叫んだ。「おいしい!」と。人間たちは顔を見合わせ、それからおそるおそるその液体を舐め始めた。液体は、今まで食べたどんなものとも似ても似つない味わいで、彼らはあっという間にその液体を舐め尽くした。そして、その様子を黙って見ていたタルタル人たちに襲いかかった。
かくして、タルタル人たちは消えてしまった。タルタル人を食べた人間たちも消えてしまった。タルタル人の味を再現して作ったというソースだけが残されている。
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むかしむかし、空の向こうからタルタル人がやってきた。彼らは人間と同じような姿かたちをしていたが、人間にはない、やわらかなからだを持っていた。からだのどの部分もどこまでも伸び、どこまでも曲がった。
タルタル人たちは、友好の証として、自らのからだを切り裂いた。人間たちは驚いたが、タルタル人は痛がる様子もなく、流れ落ちてくるほんのり黄色みがかった白い液体を、見たことのない透明な器に入れた。タルタル人は言った。「わたしたちのからだはとてもおいしい。ぜひ食べてみてください」と。人間たちは気味悪がったが、ひとりのおなかをすかせた子どもがその液体を舐めた。子どもは叫んだ。「おいしい!」と。人間たちは顔を見合わせ、それからおそるおそるその液体を舐め始めた。液体は、今まで食べたどんものとも似ても似つかない味わいで、彼らはあっという間にその液体を舐め尽くした。そして、その様子を黙って見ていたタルタル人たちに襲いかかった。
かくして、タルタル人たちは消えてしまった。タルタル人を食べた人間たちも消えてしまった。タルタル人の味を再現して作ったというソースだけが残されている。
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むかしむかし、空の向こうからタルタル人がやってきた。彼らは人間と同じような姿かたちをしていたが、人間にはない、やわらかなからだを持っていた。からだのどの部分もどこまでも伸び、どこまでも曲がった。
タルタル人たちは、友好の証として、自らのからだを切り裂いた。人間たちは驚いたが、タルタル人は痛がる様子もなく、流れ落ちてくるほんのり黄色みがかった白い液体を、見たことのない透明な器に入れた。タルタル人は言った。「わたしたちのからだはとてもおいしい。ぜひ食べてみてください」と。人間たちは気味悪がったが、ひとりのおなかをすかせた子どもがその液体を舐めた。子どもは叫んだ。「おいしい!」と。人間たちは顔を見合わせ、それからおそるおそるその液体を舐め始めた。液体は、今まで食べたどんものとも似ても似つかない味わいで、彼らはあっという間にその液体を舐め尽くした。そして、その様子を黙って見ていたタルタル人たちに襲いかかった。
かくして、タルタル人たちは消えてしまった。タルタル人を食べた人間たちも消えてしまった。タルタル人の味を再現して作ったというソースだけが残されている。
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むかしむかし、空の向こうからタルタル人がやってきた。彼らは人間と同じような姿かたちをしていたが人間にはない、やわらかなからだを持っていた。からだのどの部分もどこまでも伸び、どこまでも曲がった。
タルタル人たちは、友好の証として、自らのからだを切り裂いた。人間たちは驚いたが、タルタル人は痛がる様子もなく、流れ落ちてくるほんのり黄色みがかった白い液体を、見たことのない透明な器に入れた。タルタル人は言った。「わたしたちのからだはとてもおいしい。ぜひ食べてみてください」と。人間たちは気味悪がったが、ひとりのおなかをすかせた子どもがその液体を舐めた。子どもは叫んだ。「おいしい!」と。人間たちは顔を見合わせ、それからおそるおそるその液体を舐め始めた。液体は、今まで食べたどんなものとも似ても似つかない味わいで、彼らはあっという間にその液体を舐め尽くした。そして、その様子を黙って見ていたタルタル人たちに襲いかかった。
かくして、タルタル人たちは消えてしまった。タルタル人を食べた人間たちも消えてしまった。タルタル人の味を再現して作ったというソースだけが残されている。
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むかしむかし、空の向こうからタルタル人がやってきた。彼らは人間と同じような姿かたちをしていたが人間にはない、やわらかなからだを持っていた。からだのどの部分もどこまでも伸び、どこまでも曲がった。
タルタル人たちは、友好の証として、自らのからだを切り裂いた。人間たちは驚いたが、タルタル人は痛がる様子もなく、流れ落ちてくるほんのり黄色みがかった白い液体を、見たことのない透明な器に入れた。タルタル人は言った。「わたしたちのからだはとてもおいしい。ぜひ食べてみてください」と。人間たちは気味悪がったが、ひとりのおなかをすかせた子どもがその液体を舐めた。子どもは叫んだ。「おいしい!」と。人間たちは顔を見合わせ、それからおそるおそるその液体を舐め始めた。液体は、今まで食べたどんなものとも似ても似つかない味わいで、彼らはあっという間にその液体を舐め尽くした。そして、その様子を黙って見ていたタルタル人たちに襲いかかった。
かくして、タルタル人たちは消えてしまった。タルタル人を食べた人間たちも消えてしまった。タルタル人の味を再現して作ったというソースだけが残されている。
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むかしむかし、空の向こうからタルタル人がやってきた。彼らは人間と同じような姿かたちをしていたが人間にはない、やわらかなからだを持っていた。からだのどの部分もどこまでも伸び、どこまでも曲がった。
タルタル人たちは、友好のとして、自らのからだを切り裂いた。人間たちは驚いたが、タルタル人は痛がる様子もなく、流れ落ちてくるほんのり黄色みがかった白い液体を、見たことのない透明な器に入れた。タルタル人は言った。「わたしたちのからだはとてもおいしい。ぜひ食べてみてください」と。人間たちは気味悪がったが、ひとりのおなかをすかせた子どもがその液体を舐めた。子どもは叫んだ。「おいしい!」と。人間たちは顔を見合わせ、それからおそるおそるその液体を舐め始めた。液体は、今まで食べたどんなものとも似ても似つかない味わいで、彼らはあっという間にその液体を舐め尽くした。そして、その様子を黙って見ていたタルタル人たちに襲いかかった。
かくして、タルタル人たちは消えてしまった。タルタル人を食べた人間たちも消えてしまった。タルタル人の味を再現して作ったというソースだけが残されている。
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文明の爛熟期においても、味をレコードすることはできなかった。サー