558
森羅万象、零と一なる無限との合間、夢幻に揺蕩う。感なる想いは、私なるわたしに消える。留められない写し身は、宇宙の定義を問う。靄と霧が、甘露の光を淡くし、遡及と敷衍の漂いに、凝縮と発散を繰り返す。外には外があり、内には自己相似のそれがある。
もとめてと
あなたのといき
やさしくて
わたしのゆめの
あなたこいして
遠く、近く、哀が愛に躊躇いし、なお時を失う。眩暈の原点は、私ではなく、愛であるだろうか。淡く轟く色に似た宇宙の舞が、形の朧な夢となり、祈りの結晶となった。掌に収まらない意味が、波紋を宇宙に燻らしながら、逆に只ならぬ緊張を齎らした。私はあなた、あなたは私。ひとつに消える。
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森羅万象、零と一なる無限との合間、夢幻に揺蕩う。感なる想いは、私なるわたしに消える。留められない写し身は、宇宙の定義を問う。靄と霧が、甘露の光を淡くし、遡及と敷衍の漂いに、凝縮と発散を繰り返す。外には外があり、内には自己相似のそれがある。
もとめてと
あなたのといき
やさしくて
わたしのゆめの
あなたこいして
遠く、近く、哀が愛に躊躇いし、なお時を失う。眩暈の原点は、私ではなく、愛であるだろうか。淡く轟く色に似た宇宙の舞が、形の朧な夢となり、祈りの結晶となった。掌に収まらない意味が、波紋を宇宙に燻らしな
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真っ白なキャンバスがありました。
傍には「自由をお描きください」と看板が立ててありました。
セーラー服の女の子がやってきて、カゴから飛び立つカナリヤを描きました。
自転車に乗った子どもがやってきて、大海原を泳ぐクジラを描きました。
坊主頭の男がやってきて、格子ごしに見える月を描きました。
いろいろな人がやってきて、上から上からどんどん絵を重ねていきました。
やがてキャンバスは真っ黒になりました。
通りすがりの人々は首をひねって絵の前を通り過ぎました。
夜になりました。
暗くて真っ黒なキャンバスは見えませんでした。
けれども見えないキャンバスの上を自在に駆け巡る何かがありました。
ヒョーザザッツィーツイィーザンックルクルクルツイィーツィークルクルザンッ
青い炎を閃かせ、光る花びらを散らし、あるがままに思うがままに飛翔するのでした。
次の朝、真っ白なキャンバスがありました。
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むかしむかし、空の向こうからタルタル人がやってきた。彼らは人間と同じような姿かたちをしていたが、人間にはない、やわらかなからだを持っていた。からだのどの部分もどこまでも伸び、どこまでも曲がった。
タルタル人たちは、友好の証として、自らのからだを切り裂いた。人間たちは驚いたが、タルタル人は痛がる様子もなく、流れ落ちてくるほんのり黄色みがかった白い液体を、見たことのない透明な器に入れた。タルタル人は言った。「わたしたちのからだはとてもおいしい。ぜひ食べてみてください」と。人間たちは気味悪がったが、ひとりのおなかをすかせた子どもがその液体を舐めた。子どもは叫んだ。「おいしい!」と。人間たちは顔を見合わせ、それからおそるおそるその液体を舐め始めた。液体は、今まで食べたどんなものとも似ても似つかない味わいで、彼らはあっという間にその液体を舐め尽くした。そして、その様子を黙って見ていたタルタル人たちに襲いかかった。
かくして、タルタル人たちは消えてしまった。タルタル人を食べた人間たちも消えてしまった。タルタル人の味を再現して作ったというソースだけが残されている。
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むかしむかし、空の向こうからタルタル人がやってきた。彼らは人間と同じような姿かたちをしていたが、人間にはない、やわらかなからだを持っていた。からだのどの部分もどこまでも伸び、どこまでも曲がった。
タルタル人たちは、友好の証として、自らのからだを切り裂いた。人間たちは驚いたが、タルタル人は痛がる様子もなく、流れ落ちてくるほんのり黄色みがかった白い液体を、見たことのない透明な器に入れた。タルタル人は言った。「わたしたちのからだはとてもおいしい。ぜひ食べてみてください」と。人間たちは気味悪がったが、ひとりのおなかをすかせた子どもがその液体を舐めた。子どもは叫んだ。「おいしい!」と。人間たちは顔を見合わせ、それからおそるおそるその液体を舐め始めた。液体は、今まで食べたどんなものとも似ても似つかない味わいで、彼らはあっという間にその液体を舐め尽くした。そして、その様子を黙って見ていたタルタル人たちに襲いかかった。
かくして、タルタル人たちは消えてしまった。タルタル人を食べた人間たちも消えてしまった。タルタル人の味を再現して作ったというソースだけが残されている。
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むかしむかし、空の向こうからタルタル人がやってきた。彼らは人間と同じような姿かたちをしていたが、人間にはない、やわらかなからだを持っていた。からだのどの部分もどこまでも伸び、どこまでも曲がった。
タルタル人たちは、友好の証として、自らのからだを切り裂いた。人間たちは驚いたが、タルタル人は痛がる様子もなく、流れ落ちてくるほんのり黄色みがかった白い液体を、見たことのない透明な器に入れた。タルタル人は言った。「わたしたちのからだはとてもおいしい。ぜひ食べてみてください」と。人間たちは気味悪がったが、ひとりのおなかをすかせた子どもがその液体を舐めた。子どもは叫んだ。「おいしい!」と。人間たちは顔を見合わせ、それからおそるおそるその液体を舐め始めた。液体は、今まで食べたどんなものとも似ても似つかない味わいで、彼らはあっという間にその液体を舐め尽くした。そして、その様子を黙って見ていたタルタル人たちに襲いかかった。
かくして、タルタル人たちは消えてしまった。タルタル人を食べた人間たちも消えてしまった。タルタル人の味を再現して作ったというソースだけが残されている
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むかしむかし、空の向こうからタルタル人がやってきた。彼らは人間と同じような姿かたちをしていたが、人間にはない、やわらかなからだを持っていた。からだのどの部分もどこまでも伸び、どこまでも曲がった。
タルタル人たちは、友好の証として、自らのからだを切り裂いた。人間たちは驚いたが、タルタル人は痛がる様子もなく、流れ落ちてくるほんのり黄色みがかった白い液体を、見たことのない透明な器に入れた。タルタル人は言った。「わたしたちのからだはとてもおいしい。ぜひ食べてみてください」と。人間たちは気味悪がったが、ひとりのおなかをすかせた子どもがその液体を舐めた。子どもは叫んだ。「おいしい!」と。人間たちは顔を見合わせ、それからおそるおそるその液体を舐め始めた。液体は、今まで食べたどんなものとも似ても似つかない味わいで、彼らはあっという間にその液体を舐め尽くした。そして、その様子を黙って見ていたタルタル人たちに襲いかかった。
かくして、タルタル人たちは消えてしまった。タルタル人を食べた人間たちも消えてしまった。タルタル人の味を再現して作ったというソースだけが残されている
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これが人生で四度目の恋だった。いや、恋はもっと密かにたくさん行われてきたのだけれど、正式にお付き合いした回数が四回目。
「飽きない?」
私はチキンを頬張る彼に、おそるおそる尋ねた。彼が美味しそうに何度も口にするチキンにも、私がナイフを入れている魚料理にも青々としたパセリが散りばめられたタルタルソースが、たっぷりとかかっていたのだ。
ツンとしたアクセントになるパセリや鮮やかな玉ねぎの味がふと以前の恋を思い出させる。相手から唐突に告白され、そして一方的に別れを告げられた苦い記憶。
「出会った時は何て魅力的な女の子なのだと思ったけれど」
続く言葉は皆、そこが辛くなってしまうのだと言う。
私はタルタルソース系女子なのかもしれない。
最初は独特なクセのある部分に魅かれるも結局くどくなっていく。
「飽きるどころか」
彼は口元にソースが付いていることにも気づかずに小さな笑窪を見せながら笑った。
「ますます好きになっていくよ」
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むかしむかし、空の向こうからタルタル人がやってきた。彼らは人間と同じような姿かたちをしていたが、人間にはない、やわらかなからだを持っていた。からだのどの部分もどこまでも伸び、どこまでも曲がった。
タルタル人たちは、友好の証として自らのからだを切り裂いた。人間たちは驚いたが、タルタル人は痛がる様子もなく、流れ落ちてくるほんのり黄色みがかった白い液体を、見たことのない透明な器に入れた。タルタル人は言った。「わたしたちのからだはとてもおいしい。ぜひ食べてみてください」と。人間たちは気味悪がったが、ひとりのおなかをすかせた子どもがその液体を舐めた。子どもは叫んだ。「おいしい!」と。人間たちは顔を見合わせ、それからおそるおそるその液体を舐め始めた。液体は、今まで食べたどんなものとも似ても似つかない味わいで、彼らはあっという間にその液体を舐め尽くした。そして、その様子を黙って見ていたタルタル人たちに襲いかかった。
かくして、タルタル人たちは消えてしまった。タルタル人を食べた人間たちも消えてしまった。タルタル人の味を再現して作ったというソースだけが残されている。
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むかしむかし、空の向こうからタルタル人がやってきた。彼らは人間と同じような姿かたちをしていたが、人間にはない、やわらかなからだを持っていた。からだのどの部分もどこまでも伸び、どこまでも曲がった。
タルタル人たちは、友好の証として、自らのからだを切り裂いた。人間たちは驚いたが、タルタル人は痛がる様子もなく、流れ落ちてくるほんのり黄色みがかった白い液体を、見たことのない透明な器に入れた。タルタル人は言った。「わたしたちのからだはとてもおいしい。ぜひ食べてみてください」と。人間たちは気味悪がったが、ひとりのおなかをすかせた子どもがその液体を舐めた。子どもは叫んだ。「おいしい!」と。人間たちは顔を見合わせ、それからおそるおそるその液体を舐め始めた。液体は、今まで食べたどんなものとも似ても似つかない味わいで、彼らはあっという間にその液体を舐め尽くした。そして、その様子を黙って見ていたタルタル人たちに襲いかかっ。
かくして、タルタル人たちは消えてしまった。タルタル人を食べた人間たちも消えてしまった。タルタル人の味を再現して作ったというソースだけが残されている。